(マリオデRTA)マリオデッセイAny%の終わりが近づいている

先日Tyron氏によってWRが更新された。記録は56:41。

記録は勿論だが、他にも特筆すべき点がある。

それは、Sum of Best (SOB)が56分切りを達成している事である。

 

10か月前、世界初の56分台「56:55」を出した時点ではSOBは「56:24」であった。

「28秒も詰める余地があったか?」と言われそうな短縮量だ。

その疑問は正しく、最適化等のみで得られたタイムではない。

その大幅な短縮の正体は

  • Triple Moon Clipという1フレーム技を3か所で使用
  • Ice Corner Clipという非常にシビアな壁抜け技

このバグ技達の使用により合計で20秒の短縮が可能になった。

そして、Any%終わりが近づいている理由に、この壁抜け技の難易度が大きく関係している。順を追って説明しよう。

基礎動作のみではなく、バグ技の質も求められるRTA

オデッセイAny%には難易度が高いバグ技がほとんど無く、タイム短縮に影響する技の多くがマリオの操作によるもので「基礎動作ゲー」と評されているほど。

しかし最近はその評価が覆されており、「基礎動作」だけではなく、「バグ技ゲー」の側面も見え始めたのだ。

Triple Moon ClipとIce Corner Clip(ICC)のせいで・・・

Triple Moon Clipとは

まずTriple Moon Clipについて説明しよう。

技名から分かる通りパワームーンを使って壁抜けする技で、マリオデRTAでは有名な「Moon Clip」の派生技である。

Moon Clipは主に森の国のナッツ壁抜けで使用されている。

しかし、Moon Clipには弱点があり、フィールド上で既に出現してるムーンでは壁抜けが不可能という弱点があった。通常のMoon Clipでは、ナッツ等を壊してフィールド上に出現した時限定でしか壁抜け出来ないのだ。

だが今回紹介する「Triple Moon Clip」どんな状況化でも壁抜け可能という破格の性能を持つ。猶予1フレームという事だけ目をつぶれば、壁側にムーンがあればどこでも壁抜け可能という夢のようなバグである。しかしはチャンスは一度切り、やり直しは効かない。

ちなみに抜ける条件は、三段ジャンプでムーンに近づき、触れる1F前に帽子を投げる事で壁を抜けるという至ってシンプルな目押しである。

Triple Moon Clipを使用する国

・湖の国、2枚目のムーン(別名Lake Moon Clip)

通常アプローチと比べて4.5秒短縮

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Triple Moon Clipの中で一番簡単で最上位帯では、ほぼ全員が使用している。

また、失敗しても1秒弱のロスなのでどちらかと言うとやり得の部類に入る。

世界1位のTyron氏は成功率85%以上あり、失敗する事の方が珍しいようだ。

安定化に至っている理由として、ゲーム内の三段ジャンプ→ムーンに触れる間隔と、現実世界の親指でBボタン押して、Yボタンに親指が移る間隔がほぼ同じだからだと考えられる。

とは言え腐っても1F技なので、常人にはまず安定させる事は厳しいだろう。(私も60%前後しかない)

・森の国、9枚目のムーン(別名Maze Clip)

通常アプローチと比べて6秒短縮

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6秒という高いアドバンテージに比例して難易度も極めて高い

ムーンを取る前の三段ジャンプがかなりの高難易度で、奥過ぎると壁をズサーしてしまうし、手前過ぎると壁に遠すぎて壁が抜けれない等1フレ以外の部分も難しい。

 

・森の国、15枚目のムーン(別名pipe way clip)

通常の最速周期と比べて約4.5秒の短縮。

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唯一、横スクロールの中で行うTriple Moon Clip。

他とは異なり、三段ジャンプの高さ調整が必要な点が難易度を底上げしている。

どういう訳か三段ジャンプして、完全に落下し始めてからムーンに触れても壁を抜ける事が出来なくなってしまう。

他は地形的に最大高度の三段ジャンプで良いのだが、ここだけ自力で高度調整をする必要がある。

適切な高度を出せる猶予は3~4フレーム。特別難しい訳でも無いが、安定する訳でも無い絶妙な難易度。

 

・壁抜けの条件

全てのMoon Clip系統に言える事だが、壁抜けする為にはムーンを取る時にマリオが壁とは反対側に向く必要がある

通常のMoon Clipがバク宙で取ったりするのはその為である。

では、三段ジャンプではどうしてるのか?

シンプルにムーンを取る数フレーム前に、壁とは逆方向にスティックを入れて、マリオの向きを変えている。

これが地味に難易度を上げているポイントだったりする。

・総評

・ある程度の三段ジャンプ精度が必要(ジャンプの高さ、前進するタイミング)

・ムーンを触れた1F前に帽子投げる必要があり、その猶予は1フレーム。チャンスは一度切り。

・ムーンを触れる数フレーム前に壁とは逆方向にスティックを入れる必要がある。

が主な難しいポイントだろう。

ICCとは?

Ice Corner Clipと呼ばれる技で、これは雪の国のミニステージ、つらら洞窟のエリアで行われる壁抜けの事を指す。

本来はクリボー4匹でしか解放出来ない場所を、壁を抜ける事でギミック無視してムーンを取る事が出来る。

RTAでは最大5秒のタイム短縮になる。

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・セットアップICC

"RTA"では最大5秒の短縮と書いたが、実は最大8秒も短縮する事が出来る。だがそれはセットアップ無しの場合で、難易度も大幅に上がり、再現性が無い。やはりRTAではやはりセットアップが無いと成功させる事もままならない。

セットアップと聞いたら「安定法がある?」と思うはずだが、ICCのセットアップは不完全で、最終的にはスティックの精度を求められる。

セットアップの手順はこうだ、

1,赤い線の所に掴まる。

2,起き上がり時はBボタンではなく、スティックで起き上がる(Bボタンで起き上がると位置がズレる)

3,マリオ視点にして壁の模様(2本の黒い線)を見ながら、矢印の左側のケツ(赤い線)の部分にジャイロ操作で合わす。この画像の向きが理想だが、多少左右にズレてもどうにかなる(その分スティック操作の難易度が上がる)

4,低空帽子投げダイブで角に向かう。

といった手順だ。特筆すべき点はジャイロ操作で向きの調整してる点だろう。

これでお分かりだと思うが、ジャイロ操作がセットアップのとなってる為、"不完全"なセットアップなのである。

ジャイロ操作の感度はゲーム内で「低い、普通、高い」の三段階で分かられている。感度「低い」に設定できれば相当楽だったのだが、メカハナちゃん戦でジャイロ操作を使う必要があり、ジャイロの感度がそのままタイムに影響するので、強制的に感度「高い」でやるハメになる。

・余談、何故抜ける?

マリオオデッセイは元々壁の角の判定に難があり、非常にシビアだが多くの場所で角抜けが可能である。その難しさはTAS技と評されるほど。

しかしICCの角抜けは比較的緩めで、RTAでギリギリ採用出来るレベルである。

ギリギリ再現性がある壁抜けを用意した任天堂に感謝。

Any%世界記録が更新されまくるのは今年でラスト

さて本題、タイトルにも書いてある通り、Any%RTAは終わりはもう間近になっている

現在の世界記録は「56:41」なのだが、Tyronはどうやら56:30切りまでやる気らしい。何かの間違いで56:20切りでも出してしまえば、一生抜かれない(本人すら)と本気で考える。

今回、高難易度壁抜け技が導入されて、忍耐力とモチベ維持の価値が大幅に上がったと私は考える。

例えばTyronと同じレベルに基礎動作と安定感があったとしても、強制リセゲーポイント(DSS、3種の1フレ壁抜け、ICC、2DSS)に耐えれるのか?という話である。

中略、2DSSとは月の国の脱出パート使われるバグ技。

今はまだタイムの猶予があるので、1F壁抜けやICC等を多少ミスってもWRは出せるが、いずれ30秒切りが達成されたら、少なくとも1つでもミスればもうWR厳しいという状況になるだろう。

そんな状況でも世界狙いをする走者が出てくるのかすら怪しい。

またTyronの基礎動作と安定感はほぼ理論値だと思っていて、同等のレベルまでは行けても越える事は不可能

私はこう考え、オデッセイAny%WRは今年度で終わり迎える思った。

終わりに

最近は上位勢の活気が戻ってきており、mitchやbusterdoggyが56分台狙いしてたり、他の走者も57分台狙いしてたり、ここ2か月で57分台が2人も出た。

個人的には「Mitchとtyronの2強時代はまた見たいと思いつつ、やっぱりブランクあるよな~最近buster上手くなってるな~俺も頑張ろう」みたいな、一走者、一視聴者としてオデッセイAny%を楽しんでいる。この盛り上がりもしばらく見れないだろうし、私も今年で本当に"Any%は"辞めるつもりだし、今を噛みしめて人一倍楽しんでいこうと思う。